CES2025参加レポート#2:変わりゆくテクノロジーの主役~人と寄り添うパートナーへ~

2025年1月7日から10日まで、米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市CES2025。世界中から14万人以上が集まるこのイベントにプラザクリエイト代表の新谷が参加をしてきました。
会場ではAIの最先端技術が展示され、産業構造の大きな転換点を目の当たりに。写真プリントからアパレルEC支援まで事業を展開する私たちにとって、今回のCESは大きな示唆に富むものでした。4回にわたり、その現場レポートをお届けします。
第2話は、2023年からの振り返りも含めてお楽しみください。
CES®(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)

1967年からアメリカのラスベガスで毎年開催されている、世界最大規模のテクノロジー見本市。新製品の発表や技術革新のプラットフォームとして、世界中の注目を集める。家電業界をはじめ、自動車、IT、ヘルスケアなど多岐にわたる分野の企業やスタートアップが参加し、次世代の技術やトレンドを紹介。また、業界のリーダーによる基調講演やパネルディスカッションが行われ、テクノロジーがどのように社会やビジネスを変革していくかについて議論される場でもある。
2023年──人々の安全と暮らしを見つめ直す
実は私は、2023年から2025年まで、3年連続でCESに参加しています。そんな私が目の当たりにしたのは、テクノロジーの主役が劇的に入れ替わる瞬間です。
2023年の年のテーマは「Human Security for all(人間の安全保障)」。コロナ禍を経て、人々の「安全」や「暮らし」を見つめ直す姿勢が、展示全体を通して強く感じられました。



基調講演に選ばれたのは、世界最大の農業機器メーカー・ジョンディア社のCEOでした。通常であれば自動車メーカーや電機メーカーが務めることの多い基調講演に、農業機器メーカーが選ばれたことに、正直驚きました。 しかし講演を聞いていくうちに、その意図が明確に伝わってきました。2050年には世界人口が約100億人に達すると言われる中、食料安全保障は人類共通の重要課題となっているのです。

2024年──AIが広げる新しい体験
2024年のテーマは「ALL ON(オールオン)」。All onは直訳すると「〇〇に全力を尽くす」という意味ですが、私が感じたのは“何でもあり”。未来は全てここにあるという、強烈なメッセージを感じました。
それを体現していたのが基調講演です。なんとステージに上がったのはフランスの化粧品大手ロレアルのニコラ・イエロニムスCEO。なぜ家電とは縁が遠そうな化粧品会社が?と少し意外に感じましたが、実際の講演を聞いて、私の認識は大きく変わることになりました。
彼らが発表したのは対話型AI「Beauty Genius」。まるで熟練の美容コンサルタントと話しているかのような、驚くほど自然な対話を実現していました。10ペタバイトものデータと、50カ国のメーキャップアーティスト1万人以上の知見を活用している──その説明を聞いて、美容業界におけるAIの実用化がここまで進んでいることに大きな衝撃を受けました。
従来のようにGAFAが主役ではなく、むしろGAFAが提供するAIテクノロジーを活用するサービス事業者が中心となっている点も、AIが特別なものではなく、あらゆるサービスに実装される時代が来ていることを示唆していました。
個人的に印象深かったのは、AIによるメイクアップシミュレーターです。自分がしたい化粧の画像をAIが分析して、その化粧後の状態を顔にプロジェクションマッピングのように投影する。これは、ユーザーとの対話を通じて、その人の好みや生活スタイル、なりたいイメージを深く理解しようとするところにポイントがあり、こうした発想は、私たちがパレットプラザの店頭で実践している、お客様との対話を通じて最適な写真選びやアルバム作りのサービスにも活かせるのではないかと感じました。

AIによる快適なサービス作りは、人と人とのコミュニケーションをより豊かにすることにもつながるはず。
2025年──感情に寄り添うAIの新しい形
そして、2025年のCESのテーマが「DIVE IN」。まさに、AIが自然に溶け込んでいる未来に飛び込むというイメージが、脳裏に浮かびます。

NVIDIAなど半導体メーカーが主役に踊り出て、トヨタなど世界的な企業の活動に大きな影響を与えている──そうした華々しい表舞台の影で、私が個人的に注目したのは、日本の株式会社MIXIが展示した感情支援ロボット「Romi」です。手のひらサイズのこのロボットは、チャットGPTのような汎用AIとも、韓国のメーカーの機能重視のロボットとも異なる、新しい価値を提供していました。

これまで見てきた多くのAIロボットは、「何かをしてあげる」という“お手伝いさん”の役割を重視していました。しかしRomiは違います。ユーザーが日々の出来事を話しかけると、それを長期記憶として覚えていて、「あの時のことと、今回はこう繋がっているんですね」といった会話を展開してくれる、いわば“お友達”ロボットです。
特に印象的だったのは、ユーザーの感情に合わせて表情を変える機能です。悲しい話をすれば表情を曇らせ、うれしい話には笑顔で応える──その自然な反応に、思わず引き込まれてしまいました。こうした形で日常生活にAIが溶け込んでいくのも、一つの未来の形なのかもしれません。

思い出と感情に寄り添う新しいサービスへ
この3年間のCESの参加を通して、私が強く感じているのは、単なる技術革新ではなく、人間とテクノロジーの関係性が大きく変わってきているということです。2023年の社会貢献型の展示から、RomiやBeauty Geniusに見られるように、今やAIは効率化ツールから、人間の感情や専門知識を理解し、それに寄り添うパートナーへと進化しているのです。
私たちの事業も、AIやデジタル技術を活用しながら、お客様一人一人の思い出や感情に寄り添えるような、新しいサービスを考えていく必要があると思います。その可能性の芽が、今回のCESにはたくさん詰まっていたように感じました。
次回は、世界各国の展示ブースから見えてきた、グローバル競争の新しい地図についてお伝えします。
(シリーズ全編はこちら)



(CES参加者・話し手)

新谷 隼人(しんたにはやと)
株式会社プラザクリエイト 代表取締役社長。広告代理店勤務を経て、株式会社リクルートに転職し、3年連続でMVPを獲得。リテール新規開発グループやカスタマーサクセス領域にてマネージャーとして活躍。2019年に株式会社プラザクリエイトへ入社。取締役を経て、2022年より代表取締役社長に就任。
(聞き手)

いからしひろき
プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。
きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/