CES2025参加レポート#1:AI革命の最前線~時代の転換点に立ち会い、感じたこと~

2025年1月7日から10日まで、米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市CES2025。世界中から14万人以上が集まるこのイベントにプラザクリエイト代表の新谷が参加をしてきました。
会場ではAIの最先端技術が展示され、産業構造の大きな転換点を目の当たりに。写真プリントからアパレルEC支援まで事業を展開する私たちにとって、今回のCESは大きな示唆に富むものでした。4回にわたり、その現場レポートをお届けします。
臨場感たっぷりの写真と共に、CESの追体験をお楽しみください。
CES®(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)

1967年からアメリカのラスベガスで毎年開催されている、世界最大規模のテクノロジー見本市。新製品の発表や技術革新のプラットフォームとして、世界中の注目を集める。家電業界をはじめ、自動車、IT、ヘルスケアなど多岐にわたる分野の企業やスタートアップが参加し、次世代の技術やトレンドを紹介。また、業界のリーダーによる基調講演やパネルディスカッションが行われ、テクノロジーがどのように社会やビジネスを変革していくかについて議論される場でもある。
異例のキーノート、ただならぬ熱気
私が現地入りしたのは1月6日。半導体メーカーNVIDIAのキーノートスピーチ会場に2時間前に到着したのに、すでに長蛇の列が。

ようやく案内された席は会場の端っこで、これではCEOのジェンスン・フアン氏は米粒ほどの大きさにしか見えません。「ちっちゃいなぁ……」と思わずため息。
でも、黒いレザージャケット姿のフアン氏が登場した瞬間、会場は大きな拍手に包まれ、その熱気は端っこの私の席まで余すことなく伝わってきました。

本来、CESの本番は7日からで、その前は報道関係者向けの日なんです。でも今回は特別。一般参加者も含めた特別セッションとしてNVIDIAのキーノートが開催されました。横には海外メディアやテック企業の経営者たちが陣取っています。これまでロレアルやマイクロソフトが担当してきたオープニングで、半導体メーカーが基調講演するなんて。業界の力関係が大きく変わってきているんだなと、肌で感じました。
「コツコツ」が歴史を変えた
フアンCEOが「物理的な世界を理解するAIが必要だ」と力強く宣言したとき、会場が大きくどよめいたのが印象的でした。重力や摩擦といった現実の物理現象を理解するAI。その具体例として発表されたのが、トヨタ自動車との提携です。フアンCEOは「20年後には全ての車が自動運転になる」とまで断言。そのために、シミュレーション技術を駆使して、現実の世界を仮想空間で再現し、そこでAIを学習させていると言います。
さらに衝撃的だったのが「Cosmos」という新技術の発表です。ロボットや自動運転向けのAI基盤技術を無償提供するという、かなり思い切った提案でした。ChatGPTの基盤となっているLLM(大規模言語モデル)のように、誰もが使える技術にしたいんだとか。すでにノルウェーや米国のロボット開発企業が使い始めているそうです。
Introducing NVIDIA Cosmos, an open-source, open-weight Video World Model. It's trained on 20M hours of videos and weighs from 4B to 14B. Cosmos offers two flavors: diffusion (continuous tokens) and autoregressive (discrete tokens); and two generation modes: text->video and… pic.twitter.com/onplT711Fy
— Jim Fan (@DrJimFan) January 7, 2025
実は私、最近までNVIDIAのことを「AIブームで急に伸びた新興企業」くらいに思っていました。でも、実際は今から30年以上前の1993年創業で、ゲーム用のグラフィックス半導体(GPU)をコツコツ作り続けてきた会社。地道に積み重ねてきた技術が、ChatGPTのような生成AIの登場で、一気に花開いたんです。そんな歴史を知って、とても興味深く感じました。
特に注目したいのは、NVIDIAが半導体だけでなく、その設計を行うためのプラットフォームも持っていること。市場でどんな設計のチップが求められているのか、リアルタイムで把握できる仕組みなんです。データセンター向けのAI半導体市場では、なんと8割のシェアを握っているとか。これは強いですよね。

クラウドからエッジへ、新たな転換点
翌日以降のCES本番の会場でも、やはりAIが主役でした。



今のAIはクラウドが主流ですが、コストと電力消費の問題から、必要な機能に絞った「エッジAI」が特に私の興味をそそりました。例えば、水中で魚の種類や数を即座に判別できるカメラなど、ネットにつながなくても高度な処理ができる機器の展示が目立ちました。


これは私たちの事業にも大きなヒントになります。例えば、子供の写真に特化したAIカメラシステムや、3Dレンダリング技術を使った新しい思い出作りのサービス。パレットプラザの店舗で撮影した家族写真を即座にデジタル加工して結婚式のムービーを作るサービス。技術の進化は、私たちの事業に無限の可能性を広げてくれると感じています。
「AIなんて関係ない」が通用しない時代に
プラザクリエイトの社員に関わらず、「AIなんて自分たちの仕事には関係ない」と思っている方も多いかもしれません。正直に言うと、私自身、数年前はそう考えていました。でも、もう誰もがAIとは無関係ではいられない時代に突入しています。
トヨタの豊田章男会長も別会場で講演し、自動でドリフト走行する開発車の映像を披露。「自動運転は少し退屈だと思っていたが、考えが変わった」と語り、静岡県で2025年に開業予定の実証都市「ウーブン・シティ」での開発に注力する考えを示しました。テクノロジーの革新は、ビジネスモデルだけでなく、経営者の価値観すら変えていくのかもしれません。
ただ、お客様に寄り添う姿勢や品質へのこだわりという、変わらない価値もあります。これらを新しい技術とどう組み合わせていくか。会場の端っこの席で見たNVIDIAのキーノートは、私たちの未来への大きなヒントを与えてくれました。そしてラスベガスの巨大会場で感じた熱気は、きっと私たちの事業にも新しい風を吹き込んでくれるはずです。

次回は、私が参加した3年間のCESの変遷を振り返りながら、めまぐるしく変化するテクノロジーの最前線をお伝えします。
(シリーズ全編はこちら)



(CES参加者・話し手)

新谷 隼人(しんたにはやと)
株式会社プラザクリエイト 代表取締役社長。広告代理店勤務を経て、株式会社リクルートに転職し、3年連続でMVPを獲得。リテール新規開発グループやカスタマーサクセス領域にてマネージャーとして活躍。2019年に株式会社プラザクリエイトへ入社。取締役を経て、2022年より代表取締役社長に就任。
(聞き手)

いからしひろき
プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。
きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/