座談会 編集後記:三人の経営者が描く「広場」の未来

写真プリントからアパレルDXまで。時代の変化とともに進化を続けるプラザクリエイトグループの軌跡を、創業者と新経営陣による4回の特別座談会で紐解いた。
取材を通じて見えてきたのは、異なる個性を持つ三人の経営者が描く、新しい「広場」の姿だった。
オウンドメディアが描く企業の「今」
プラザクリエイトのオウンドメディアの企画と記事制作を任されたのは9月のことだった。
「特集とコラムで構成していきましょう」と提案し、その第一弾として座談会を企画した時、正直なところ少し不安があった。経営者の言葉というのは、会社の在り方を決定づける重要な要素だ。思考は言葉によって形作られる。その会社が何を考えているのか、それは必ず言葉として明確に示されなければならない。
とはいえ、グループ会社の経営者たちが一堂に会し、率直な思いを語り合う機会は、意外にも少ない。だからこそ、オウンドメディアならではの企画になるのではないか。そんな期待も同時に抱いていた。
蓋を開けてみると、当初の不安は杞憂に終わった。取材を重ねるうちに、この三人の経営者たちの言葉には不思議な魅力があることに気づいたのだ。
まず創業者の大島康広会長。一見穏やかそうに見えるが、写真への情熱を語る時の目の輝きは、中学入学祝いに手に入れたニコンF2との出会いの時から変わらないのだろうと思った。そして、大学1年での起業、35年前のプラザクリエイト創業、デジタル時代への対応まで、その歩みは、まさに日本の写真ビジネスの変遷そのものだった。
大島会長からは同時に、芯の強さも感じられた。「プラザらしさとは何か」という問いを常に持ち続け、時にはグローバル企業との提携も断る決断力。穏やかな物腰の下に、創業者ならではの頑固さと信念を垣間見ることができる。

次世代リーダーたちの新しい風
対照的なのが、36歳で社長に就任した新谷隼人氏だ。元リクルート社員らしい論理的な思考と、時折見せる茶目っ気のある物言いが印象的である。大島会長のことを「伝説の起業家として知られる存在だと後から知りました(笑)」なんて言ってのける。しかし、その裏には確かな信頼関係がある。
実は新谷社長、大島会長のことを物凄くリスペクトしているのが取材中によく分かった。だからこそ大島会長も、新しいことへのチャレンジを自由にやらせている。互いを理解し、信頼し合っているからこそ、あのような率直な会話ができるのだろう。

そして今年、新たにグループに加わったBY THE PARK代表の城市浩二氏。実は取材前はほとんど情報がなく、どんな人物なのか想像もつかなかった。しかし、話を聞いているうちに、その人となりが少しずつ見えてきた。
ZOZOTOWNでの経験を活かしたEC支援から、プラザクリエイトとの協業による新たな挑戦まで。城市氏は様々な構想を持ちながらも、今はそれを表立って主張せず、他の二人より一歩引いた立場でバランサーに徹しようとする姿勢が印象的だった。良い意味で「したたか」な現代の経営者像を感じさせる。個人的には、最も奥行きを感じたのは実はこの人である。

とはいえ、最も印象深かったのは、座談会が終わった後、三人の写真を撮影した時のことだ。普通、企業のオウンドメディアに載せる経営者の集合写真と言えば、みな同じように手を前で組み、適度な距離を保って真面目な表情を浮かべるものだ。無難で、だけど面白みのない写真。しかしそれでいい。普通の企業のオウンドメディアに「面白み」は必要ないのだから。
ところが今回の写真は違った。まるで昔のアイドル雑誌の表紙の中年版とでも言うような、不思議な魅力がある。「このおっさんたち、何か楽しそうだな」という感じが伝わってくる。

談笑というよりもはや爆笑であるが、社内ではそう珍しくも無い光景である。
「面白み」という価値
そもそも、プラザクリエイトには「面白み」がある。かつての「街のDPEショップ」という分かりやすさはないかもしれない。しかし今、第二創業期の真っ只中で、何か面白いことを始めてくれそうな予感がする。理由は明確には説明できないのだが、この三人の会話を聞いていると、そう確信せずにはいられないのだ。
全4回の座談会を通じて、彼らが描く未来像が少しずつ見えてきた。それは単なるビジネスの拡大ではない。デジタルとリアルを融合させながら、人々が集い、笑顔になれる「広場」を作っていくこと。その構想は、まだ具体的な形になっているわけではない。しかし、三人の言葉からは確かな手応えが感じられた。
従来の写真プリント事業を大切にしながらも、アパレルDXという新しい領域に踏み出す。そこには、時代の変化を捉えながら、常に進化を続けようとする企業の姿勢が表れている。

写真の力を信じて、新しい領域へのチャレンジを続ける
もちろん、この座談会だけでプラザクリエイトという企業グループの全てが分かるわけではない。しかし、この会社がどこに向かおうとしているのか。その一端は、確かに伝えられたのではないだろうか。
この記事を読んで、「何か面白そうな会社だな」と思ってもらえたら、編集者として、これ以上の喜びはない。そして、その「面白み」の正体が、これからどんな形で具現化されていくのか。それを見届けることができる立場にいられることを、とても幸せに感じている。
(2024年11月号特集・座談会シリーズ全編)




(このコラムの執筆者)

いからしひろき
プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。
きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/