【マガプラ座談会】プラザクリエイトの軌跡〜過去・現在・未来〜第1回:写真とデジタルの融合ー創業期からの歩み

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写真プリント店チェーン「パレットプラザ」を展開するプラザクリエイトグループは、創業以来、写真産業のデジタル化やアパレル業界への進出など、時代の変化に応じた変革を重ねてきた。その変革の歴史と未来像を、創業者と新経営陣による全4回の特別座談会にて描き出す。

第1回は創業者・大島康広の原点がテーマ。中学入学祝いに手にした13万9,800円のニコンF2との出会いから、最大800店舗を展開する写真店チェーンの構築、そしてデジタル時代への対応まで、写真への情熱を原動力に、時代の波を乗り越えてきた経営者の軌跡を追う。

参加者PROFILE

大島康広(おおしま やすひろ)

株式会社プラザホールディングス代表
プラザクリエイトの創業者。趣味は写真と旅行、ボート。

新谷隼人(しんたにはやと)

株式会社プラザクリエイト代表
2022年より36歳にして2代目社長に就任。趣味は、サウナとキャンプ。

城市 浩二(じょういち こうじ)

株式会社BY THE PARK代表
2016年にBY THE PARKを設立。2024年9月よりプラザクリエイトグループの一員に。

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写真との運命的な出会い

まずは大島さんと写真との出会いからお聞かせください。

大島 私の写真との出会いは幼稚園の頃です。親がオリンパスペンを買ってくれて、その後、中学の入学祝いでニコンのF2を買ってもらいました。当時13万9,800円もするカメラでしたが、これが人生を変えましたね。

新谷 その当時としては、相当な高額商品ですよね。

大島 実は最初は4万9,800円のキヤノンAE1を希望していたんです。地元のカメラ屋に父と行ったら、ちょっとドキドキするような女性店主が「お父さん、息子さんにカメラを買ってあげるなら、これを買ってあげなさい。一生使えるから」と薦めてきて(笑)。もし男性店員だったら、違う選択になっていたかもしれません。

城市 ある意味運命的な出会いですね。その後の人生を決定づける瞬間だったわけですか。

大島 ええ。小学校の時は何の取り柄もない、お寺の息子でいじめられっ子だったんですが、中学でF2を持ち始めてから、友達が集まってくるようになりました。先生も写真について話しかけてくれるようになって。

大島の出発点となる、ニコンのフィルムカメラ

高校時代の転機

その後、本格的に写真の道に進まれたんですか?

大島 高校2年生の時にカメラ店でアルバイトを始めました。ちょうどジャスピンコニカなどオートフォーカスのコンパクトカメラが出てきた時期で、カメラ業界も変革期でした。

新谷 写真の大衆化が始まった時期ですね。

大島 そうなんです。それまでは男性の趣味だった「写真」ですけど、女性もカメラを手にし始めた時代で。色んなお客さんを相手に、カメラの使い方を教えたり販売したりすることがすごく楽しかった。社長が信用してくれて、仕入れも任されるようになって。例えばコンパクトカメラが1万円で仕入れて1万6,800円で売れるんだなということを知っちゃうんです(笑)。

城市 ビジネスの基礎を学ばれた時期なんですね。

好奇心が手応えに変わる瞬間を捉え、起業の道へ

起業への道のり

大学時代に起業されたと伺いましたが。

大島 はい。大学1年の時に、高校や中学の写真部向けにカメラ機材の通信販売を始めたんです。当時21歳で信用もないので、とりあえず「中部写真」という社名をつけて。ただ、株式会社にしたのはまだ先です。

新谷 21歳での起業というのは相当なチャレンジですよね。私もリクルート時代、新規事業の立ち上げに関わりましたが、その年齢での決断は驚きです。

大島 実は、すごく面白いタイミングだったんです。ちょうどスティーブ・ジョブズがMacを作り、NECがWindowsを採用したPC-98を出した時期。パソコンの時代が始まっていて。

城市 テクノロジーの変革期をとらえられたわけですね。

大島 そうなんです。それで、学校に出入りするうち、一番困っているのがデータベースの処理だということを知りました。そこで、新入生の住所録作成から生徒手帳、学生証作成、指導部への顔写真一覧作成まで全部をパソコンで処理できるシステムを作ったんです。これがとても好評だったものですから、本格的にビジネスに参入しようと決めたのです。

パレットプラザの誕生

プラザクリエイトの設立についてお聞かせください

大島 1988年、24歳の時の設立です。最初は直営店を3店舗出したんですが、たちまち資金繰りが厳しくなってしまって。アルバイトの管理も難しく、売上の半分が消えることもありました。

新谷 そこでフランチャイズ展開を考えられたんですね。

大島 はい。ちょうどその頃、22、23歳の時にアメリカに行く機会があって、全米最大のフランチャイズショーを見に行ったんです。「マクドナルドもここから始まりました」という展示を見て、フランチャイズという仕組みの可能性に感動しました。

1986年 4月「パレットプラザ」を名古屋市中区桜通本町に1号店出店

急成長と転換期

その後、急速に店舗を拡大されていきますね。

大島 最大で800店舗まで成長し、2001年にはM&Aで55ステーションなども加えて1,200店舗になりました。ただし、同じ2001年でフランチャイズ募集をストップしています。というのも、フランチャイズ契約は5年なんですが、5年後の2006年にフィルム現像がどうなっているか想像すると、新規募集の継続に確信が持てなくなったからです。そこから直営化を進め、同時にITへの進出も始めました。

新谷 デジタル化の波を予見されていたんですね。当時、私もIT業界にいましたが、写真業界の変革は急速でした。

城市 その決断力は素晴らしいですね。私も事業を展開する中で、先を読むことの重要性を実感しています。

デジタル時代への対応

2000年前後はITバブルの時期でしたね。

大島 毎月シリコンバレーに通っていました。「インターネットビジネスは写真ビジネスだ」と確信して、いくつも会社を立ち上げました。

新谷 その中でジグノシステムが特に成功しましたよね。

大島 ええ。1996年に始めたインターネット上に写真を保存してオンラインでプリントするサービスが原点です。今でこそiCloudやGoogleフォトは当たり前ですが、当時としてはかなり革新的でした。その後iモードのコンテンツ提供で大きく成長して。上場も果たせました。

城市 先駆的な取り組みだったわけですね。

大島 ただ、プラザクリエイト全体で見ると、2001年から2002年はITバブル崩壊で厳しい時期でした。プラザの時価総額も500億弱から一気に10分の1になって。当時のベンチャー企業100社のうち、1社くらいしか生き残れなかった。光通信もソフトバンクも厳しい状況でしたが、ここを乗り越えられた会社が今も残っているんです。

ITバブル崩壊の発生と崩壊への対峙

新たな挑戦と変革

その後、グローバル企業のビスタプリントとの提携なども経験されていますね。

大島 2016年頃、DPEショップだけでは限界があるという危機感から、次の展開を模索していました。野村総研さんから、ビスタプリントが日本進出を考えているという話があって。

新谷 あの時は、デジタル印刷の可能性を強く感じましたよね。

大島 そうなんです。オーストラリアに工場があって、日本に拠点がないのに年間4億円の売上があった。これを見て、デジタル印刷は日本に工場がなくてもできるビジネスだと確信しました。

城市 グローバルなビジネスモデルですね。

大島 ただ、合弁会社としてやっていく中で、コントロールが難しかった。ボストンの本社に改善要望を何度も頼まなければならず、2年で合弁を解消することになりました。

ホールディングス化への決断

そして現在、ホールディングス化を進められています。

大島 60歳になった私が今できることは何かと考えた結果、ここまで生き残ってこられた会社として次のステップの礎を作ることだと思い至りました。具体的には、本当のパブリックカンパニーになるために、今の資本構成をもっと変えていく必要がある。上場会社同士の合併やM&A、子会社の上場など、社会にもっと問いかけるような会社にしなければならないと考えています。

城市 私たちのような新しいグループ会社が加わったのも、そういった戦略の一環なんですね。

大島 はい。残された時間で、それをやりやすくするのがホールディングス化なんです。

先ほど、“生き残れた”とおっしゃいました。その要因は何だとお思いですか?

大島 プラザは常にチャレンジし続けてきました。ただし、チャレンジする時に「プラザらしいかどうか」というところは大切にしてきました。チャレンジして早すぎたとかダメだったものは修正する。見切りをつける。これができたから生き残れたのではないでしょうか。

新谷 そのDNAは、私たち次世代の経営陣にもしっかりと引き継いでいかなければならないですね。

DNAは、次世代の経営陣へ

(第2回に続く)

(シリーズ全編はこちら)

(この特集のインタビュアー・執筆者)

いからしひろき

プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。

きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/

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