プロが伝授!猫カメラマン・芳澤ルミ子さんに聞く、梅雨どきに室内で愛猫を可愛く撮るテク

梅雨の季節は外出が減り、愛猫と過ごす室内時間が長くなります。そんな時こそ、じっくりと猫の撮影に挑戦してみませんか? 猫カメラマンとして活躍する芳澤ルミ子さんに、室内での猫撮影テクニックを教えていただきました。
今回ぜひ挑戦してほしいのが一眼レフカメラ。スマホでは表現しきれない愛猫の魅力を引き出すことができ、プリントやフォトグッズとして長く楽しめる作品に仕上がりますよ!
教えてくれたプロ

芳澤ルミ子(よしざわ・るみこ)
猫カメラマン。これまでに数千匹の猫を撮影し、猫写真集、猫雑誌、新聞、Web連載など幅広く活動。猫の自然な表情を引き出す撮影技術に定評がある。「猫の魅力を最大限に引き出すためには、技術だけでなく猫への深い愛情が必要」をモットーに、初心者からプロまで多くの猫好きカメラマンに影響を与えている。著書情報等はこちら。
室内撮影だからこそ活かせる「光」の魅力
「室内撮影の最大の武器は、窓から差し込む自然光です」と芳澤さん。梅雨時の曇天でも、窓辺は光量があり、柔らかく美しい光質が得られるそうです。
「一眼レフカメラなら、この微妙な光の変化を敏感にとらえることができます。特に猫の瞳に光を入れる『アイキャッチ』は、室内撮影の醍醐味の一つ。窓際に猫を誘導して、瞳にキラリと光る反射を入れることで、生き生きとした表情を撮影できます」(芳澤さん、以下同)

ISO感度を上手に調整することも重要なポイント。
「暗めの室内では、ISO500~800程度に設定することで、手ブレを防ぎながらも質の良い写真が撮れます。最新の一眼レフなら、この程度の感度設定でもノイズを気にする必要はありません」
また、室内だからこそ活用したいのが「グリップオンストロボ」撮影。
「毛の質感を出し、猫の立体感を表現するため、ストロボ光を天井にバウンスさせて撮影します。猫に直接光を当てるのではなく、反射率の高い白い天井や壁にバウンスさせることで、自然で柔らかな光を作ることができ、猫を驚かせることなく美しいライティングが実現できるのは一眼レフならではの技術です」
猫目線で捉える、3つの基本アングル
室内撮影では、猫との距離が近いため、様々なアングルでの撮影が可能です。芳澤さんが特に推奨するのは「猫目線」での撮影です。
「人間の目線から見下ろすだけでは、猫の魅力は半減してしまいます。バリアングル液晶があるカメラなら、無理な体勢を取ることなく、猫の目線の高さで撮影できます」
基本となる3つのアングルは以下の通りです。
- ローアングル(見上げ)
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猫を下から見上げるように撮影することで、威厳のある表情や凛々しい姿を表現できます。
- 水平アングル(同じ目線)
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猫と同じ高さで撮影することで、親近感のある自然な表情を撮ることができます。
- 俯瞰アングル(見下ろし)
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上から撮影することで、猫の丸みや可愛らしさを強調できます。特に丸くなって眠る姿などに効果的です。
※イラストはあくまでイメージです。実際の撮影時は、猫さんにストレスのかからない適正な距離を保ちましょう。
「室内なら床に寝転んでも気になりませんし、椅子や台を使って高さを調整することも簡単です。一眼レフのファインダーを覗きながら、じっくりと構図を決められるのも魅力ですね」

猫らしい瞬間とパーツを切り取る技術
室内撮影では、猫のリラックスした自然な姿を撮影できるのも大きなメリットです。芳澤さんは「猫の愛らしいパーツ」にフォーカスした撮影を推奨します。
「肉球、口元(特にぷっくりと膨らんでいてひげが生えている“ふぐふぐ”と呼ばれる部分)、耳、尻尾など、猫特有の魅力的なパーツはたくさんあります。一眼レフの望遠機能やマクロ撮影を活用すれば、これらの細部まで美しく表現できます。猫の全体像を見せるときは背景の状況まで入れ込んで撮影することで、猫がどんな環境にいるのかストーリー性のある写真に、反対に背景をぼかせば、アートっぽい雰囲気になります」

また、猫の日常的な仕草にも注目すると良いそうです。
「グルーミングする姿、あくびをする瞬間、伸びをしている時など、猫らしい自然な動作は室内だからこそゆっくりと観察できます。連写機能を使えば、決定的瞬間を逃すことなく撮影できます」
シャッタースピードの調整も重要な技術の一つ。
「動きのある場面では1/320秒以上、静かにくつろいでいる時はやや遅めのシャッターで雰囲気を大切に撮影します。一眼レフなら、この細かな調整が直感的に行えます」
寝ている猫を撮影する際は、サイレントシャッター機能の活用がポイント。
「せっかくの可愛い寝顔を起こしてしまっては台無しです。静音機能を使えば、猫に気づかれることなく自然な表情を収めることができます」

作品として残すための仕上げとプリント活用
「デジタルで撮影した写真も、最終的にはプリントして手に取れる形にすることで、作品としての価値が格段に上がります」と芳澤さんは強調します。
室内撮影した写真は、RAW現像(デジタルカメラで撮影したRAWデータを、パソコンや専用ソフトウェアを使って画像処理する作業)でさらに美しく仕上げることが可能です。
「特に黒猫の場合、撮影時は暗く写りがちですが、現像ソフトで明度や質感を調整することで、毛の一本一本まで表現できる美しい写真に仕上がります」
プリント時のポイントも教えていただきました。
「猫の写真は、毛の質感や瞳の輝きが重要なので、高品質な用紙を選ぶことをお勧めします。また、フォトブックやカレンダーなどのフォトグッズにすれば、日常的に愛猫の写真を楽しむことができます」
一眼レフで撮影した高解像度の写真なら、大きなサイズでプリントしても美しい仕上がりになりますし、リビングに飾ったり、プレゼントとして贈ったりと、様々な活用方法があります。スマホの画面だけで見るのとは全く違う感動を味わえるでしょう。
梅雨の長い時間を利用して、愛猫との特別な時間を写真という形で残してみてはいかがでしょうか。一眼レフカメラがあれば、室内でも十分にプロ級の作品を撮影することができます。ぜひこの機会に挑戦してみてください!
(おわり)
※掲載の猫写真は全て芳澤ルミ子さんの作品です
【芳澤ルミ子さん著書紹介】


『にゃんたま』(自由国民社)、『にゃんたまω』(講談社)など。雑誌「猫びより」「ネコまる」(辰巳出版)、新聞「日刊ニャンダイ」(日刊現代)などにも写真を掲載。
(この記事の取材・執筆者)

いからしひろき
プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。
きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/