Amazon Business Summit 2025 ~リーダーシップが拓く購買変革の可能性~【前編】

アイキャッチ画像(マガプラ記事no.62用)Amazon Business Summit2025特別講演レポート

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2025年2月25日、東京都内でアマゾンジャパン合同会社主催のセミナー“Amazon Business Summit 2025”が開催されました。

「ここまでできるAmazonビジネス~間接材購買における徹底コスト削減~」をテーマに、購買・調達担当者向けに様々なセッションが行われる中、プラザクリエイト代表取締役社長の新谷隼人が特別講演に登壇。アマゾンジャパン合同会社Amazonビジネス事業本部コマーシャルセクター営業本部長の鐸木恵一郎氏、株式会社EVeM代表取締役の長村禎庸氏とともに「調達・購買部門が推進する全社変革~Amazonのリーダーシップ・プリンシプル×マネジメントの"技術"で実践~」と題した、鼎談形式のセッションを展開しました。その様子を2回に渡りお届けします。

登壇者PROFILE

鐸木 恵一郎(すずき けいいちろう)

アマゾンジャパン合同会社 Amazonビジネス事業本部 コマーシャルセクター営業本部長
2017年6月アマゾンジャパン合同会社に入社。Amazonビジネス事業本部にて大手~中堅中小企業向け営業部門を統括。アマゾンジャパン入社前は、グーグルにてオンライン広告・メディア、クラウドサービスの営業管理職に従事、それ以前はセールスフォース・ドットコム、SAPにてインサイドセールスのマネジメント職を担当。

長村 禎庸(ながむら よしのぶ)

株式会社EVeM 代表取締役CEO
2006年大阪大学卒。リクルート、DeNA、ハウテレビジョンを経てベンチャーマネージャー育成トレーニングを行うEVeM設立。 DeNAでは広告事業部長、㈱AMoAd取締役、㈱ぺロリ社長室長兼人事部長などを担当。ハウテレビジョンでは取締役COOとして同社を東証マザーズ上場に導く。

新谷 隼人(しんたに はやと)

株式会社プラザクリエイト 代表取締役社長
1986年、大阪生まれ。広告代理店を経て、株式会社リクルートに転職、3年連続MVPを獲得。リテール新規開発グループやカスタマーサクセス領域にてマネージャーとして従事。2019年に株式会社プラザクリエイトへ入社、新規事業創出をリード。取締役を経て、36歳にして2代目社長に就任

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Amazon Business Summitとは

会場参加の約100名に加え、オンラインでの参加も含めて開催された本サミット。主旨は、購買の最適化やコスト削減を目的とした「購買改革」についてを、Amazonビジネスの利用事例を交えて紹介するもの。

サミットの終盤に開催された特別講演では、そのような社内での大きな変革を推進する際の組織づくり、リーダーの在り方が議論されていきました。

登壇者は、アマゾンジャパン合同会社Amazonビジネス事業本部コマーシャルセクター営業本部長である鐸木氏と、株式会社EVeM代表取締役の長村氏。そしてファシリテーターは、プラザクリエイト代表取締役の新谷が務めました。

Amazon流リーダーシップの神髄に迫る

15時45分、特別公演がスタート。新谷のアイスブレイクトークと3人の自己紹介の後、本格的なディスカッションが開始されました。

ファシリテーターの新谷(左)、講演者の長村氏(中央)、鐸木氏(右)

口火を切ったのは鐸木氏で、Amazonのリーダーシッププリンシプルについて詳しく解説します。

Amazonの行動指針について語る鐸木氏
鐸木氏

Amazonには16の行動指針があり、社員なら誰もが知っています。これは私たちのDNAとして、会社に脈々と受け継がれているものです

鐸木氏

特筆すべきは、これがリーダー向けというわけではなく、Amazonでは全員がリーダーだと定義している点です。部門や役職に関わらず、全員が主体的に行動することが求められています

鐸木氏は、その中でも特に重要な3つの原則を紹介しました。

  1. Insist on the Highest Standards(常に高い基準を目指す)
  2. Bias for Action(素早く行動する)
  3. Have Backbone; Disagree and Commit(建設的な議論をし、決定後は全力でコミットする)
先ほどの16の行動指針の中でも、特に重要な「3つの原則」

これに対して、長村氏が質問を挟みます。

長村氏

これらの原則が社内にどう浸透しているのか気になります。特に新入社員や中途入社の方々にはどのように伝わるのでしょうか?

鐸木氏

オフィスの壁に掲示したり、日常会話の中で自然と使ったりしています。例えば『これはすごいバイアス・フォー・アクションだったね』といった具合に

早速議論を深める二人
鐸木氏

採用や評価の基準にもこの原則が組み込まれているので、共通言語として機能するんです

会場からは「なるほど」という反応とともに、納得の表情が多く見られました。日本企業でも海外発の理念や行動指針を導入しているケースは多いものの、形骸化しがちという課題を抱える参加者は少なくないようです。

高い基準と素早い行動を両立させる現実的アプローチ

次に鐸木氏は、「高い基準を追求する」ことと「素早く行動する」という一見矛盾する2つの原則をどう両立させるのかについて、実践的な考え方を共有しました。

鐸木氏

ビジネスの意思決定には2つのタイプがあります。
『One-way Door』と『Two-way Door』です

意思決定の「可逆性」と「不可逆性」を、扉に例える
鐸木氏

One-way Doorは一度決めたら後戻りできない決断です。大規模な設備投資や重要契約の締結などがこれにあたります。一方、Two-way Doorは検証や修正が可能な決断です。新しいプロセスの導入やシステム改善などです

新谷

すごくよくわかる例えです

鐸木氏

実はビジネスでの大半の決断はTwo-way Doorなんです。だからこそ、高い基準を掲げながらも素早くスタートできるのです

新谷

なるほど。後戻りできると分かっていれば、挑戦しやすくなりますね

鐸木氏

その通りです。例えば間接材コスト20%削減という野心的な目標も、特定カテゴリーから試行したり、一部門でパイロット実施したりする。データを集め、効果を確認してから全社展開する。このアプローチなら高い基準を保ちながら素早く始められます

長村氏

この考え方は、私が提唱するベンチャーマネジメントにも通じますね

鐸木氏は「後戻りできることが大事」と説く
鐸木氏

小さくても、まず始めてみる。そこから、着実な変化は生まれていくのだと思います

そう自身の講演を締め括った鐸木氏。会場からは熱心にメモを取る参加者の姿が目立ちました。購買部門のリーダーとして変革を推進する際に、明日から使える実践的なアイデアとして受け止められたのでしょう。

ここで特別講演も前半が終了。
この後、長村氏による「目標設定と管理」のプレゼンテーションへと続いていきます。

(後編に続く)

【後編記事】

(このコラムの取材・執筆者)

いからしひろき

プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。

きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/

(撮影者)

髙野宏治

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