プラザクリエイト〈クロスセルプロジェクト〉舞台裏【後編】:「やらない方が面倒くさい」へ——施策、成果、そして文化醸成の道

前編では、プラザクリエイト法人事業部クロスセルプロジェクトが2023年の発足から現在まで、どのような経緯をたどってきたかを追った。後編では、2025年7月に始動した現行チームの具体的な3つの施策、そこから生まれた驚くべき数値成果、そして「クロスセルを文化にする」という次なるフェーズへの道筋を探る。

山﨑 健一(やまざき けんいち)
株式会社プラザクリエイト
法人事業本部 法人営業部 楽天G マネージャー

雨宮 弘直(あめみや ひろなお)
株式会社プラザクリエイト
法人事業本部 プロダクト営業部 グラシス営業G

神山 彰規(かみやま あきのり)
株式会社プラザクリエイト
法人事業本部 プロダクト営業部 One-Bo営業G マネージャー
施策① 教育ビデオ——「自分事」として学ぶ場を作る
知識研修チームを率いる雨宮弘直が中心となって取り組んでいるのが、教育ビデオの制作と共有だ。
2週間に1回、法人全体の朝礼で動画を視聴・共有する仕組みを構築した。
動画のテーマは、各営業が「自分のこととして捉えられる」ように設計されている。
たとえばコワーキングボックスを担当する営業メンバーが、モバイル回線をどうお客様に提案するか。モバイル担当でない人間が、モバイルを「自分ごと」として語るためのアプローチを学べるコンテンツだ。
法人営業のメンバーは店舗出身者が多いんです。
携帯の接客は慣れていても、法人のお客様への言い方・切り口がわからないという声が多かった
と雨宮は言う。


そこで導入したのが「ロープレ動画」だ。
女性営業メンバーがMCとなり、実際の商談を模した形式で提案方法を実演する。
視聴後には簡単な確認クイズも実施し、定着を促している。
動画で『こういう言い方をすれば入りやすいんだ』と具体的にわかるようにしました。
商品知識はあっても法人への話し方がわからなかった人には、勉強になるはずです。
模倣から実践へのサイクルが回りやすくなり、チャレンジのハードルが下がった——そう実感する声は複数のメンバーから聞かれた。


この動画は本プロジェクトで制作し、共有されている。
施策② インナーコンペ——ゲーム感覚で文化を根付かせる
クロスセルという文化がなかったところから、
まず緩く始めることが大事。
と神山彰規が強調するのが、インナーコンペの設計思想だ。
個人向けのインセンティブとして、他商材をトスアップ(紹介・取り次ぎ)すると1件あたり3,000円、成約につながれば5,000円を付与する仕組みを導入した。
最初の入口としては、まずおすすめして相談に繋げるだけでいい。
そのハードルで、これだけもらえる
ただし個人インセンティブだけでは、「やる人はやる、やらない人はやらない」という二極化は避けられない。
そこで加えたのが「チーム戦コンペ」だ。メンバーを3チームに分け、商材ごとに1〜3点のポイントを設定してチーム合計で競わせる。
1位チームにはAmazonギフト券1,500円分、2位チームに500円分(以前は焼肉1人7,000円分という時期も)を進呈。
チームで競うことで「一緒に目標に向かおう」という一体感とコミュニケーションが自然に生まれる。


チームでもチャレンジできるインナーコンペ施策もプラスした
焼肉目指してチームで声をかけ合う中で、『このお客様、どうやって繋げたらいい?』という相談が起きる。
するとアドバイスがセットで返ってきて、やってみたらうまくいった——そういう循環が生まれています。
2週間に1回の朝礼では、トスアップできた案件の共有も行われる。
「うまくいった人の話を聞いて、ヒントをストックする」という文化の醸成も狙いのひとつだ。
施策③ OH!KIMOCHI——強制せず、感謝を育てる
3つ目の施策は少し毛色が異なる。社員同士が感謝を伝え合うコミュニケーションツール「OH!KIMOCHI(お気持ち)」の活用だ。
前身となるツールは前プロジェクト時代から存在していたが、有料かつほぼ稼働していなかった。
本部長の「ツールを変えても続けることに意味がある」という判断で、無料ツールに移行した。
数値化やインセンティブとは連動させない——そこが肝だ。
感謝の数を競わせようというアイデアも出ましたが、強制すると継続性を失う。
自然に感謝し合える環境を作ることが目標なので、根気よく声をかけ続けています。
とプロジェクト全体のリーダーである山﨑健一は語る。
あくまで自然発生する感謝の文化を育てること。
数字に表れにくいこの施策が、長期的な組織変容の土台になるという信念が山﨑にはある。


感謝の連鎖を自然に育てるコミュニケーションツール
数字が証明した——過去2年の4〜6倍
施策の効果は、明確な数字として現れてきた。
プロジェクト開始前の2年間(第1・2チーム期間)における累計トスアップ件数は約40件。
半期換算で約10件、月1〜2件という水準だった。
現行チームが2025年7月に始動し、実質3ヶ月程度の上期(7〜9月)での件数は28件。
そして下期(2025年10月〜2026年1月)の4ヶ月では42件。
直近4ヶ月の合計が、それまでの2年間の累計を上回った。単純計算で4〜6倍の改善だ。
成果として確実にトスアップ件数は上がっています。
以前は発信しても反応ゼロ、決まった2〜3人しか動かないという状態でした。
今は頻繁に営業メンバーから連絡が来て、ラインワークスの商材別トークルームが活発に動いています。
「あれはどうすればいい?」「このお客様に紹介できるか?」
——以前は存在しなかったこういったやりとりが、日常的に飛び交うようになった。


なぜうまくいったのか——「見ている」が伝わった
成果の要因について、山﨑は明確に語る。
一番は、頑張っていただいた方をちゃんと見ている、お返ししたいというメッセージが伝わったことです。
以前は投げっぱなしでしたが、今は研修・サポート・評価をセットにしている。
メンバーへの事前ヒアリングで得た声を全て施策に反映したことが、「自分の意見を聞いてもらえた」という信頼感につながり、参加意欲を生んだ。
「やっても報われない」「何をすれば評価されるかわからない」——最初に挙がった基本的な問題を一つひとつ丁寧に解消した結果だ。
「やらない方が面倒くさい」へ——次のフェーズ
現在のインセンティブは“一時金”がベース。
山﨑が見据える次のフェーズは、評価制度(給与評価)への組み込みだ。
当たり前のことになれば、
目標や評価の中に自然に組み込まれていく。
そうなるとやらなきゃいけない理由が増えていく。
山﨑が目指す状態を端的に表す言葉がある——「やらない方が面倒くさい」。
クロスセルをやっている人の数が多数派になれば、
やらない方がマイノリティになる。
やらない方が居心地が悪くなるくらいにまでいったら
勝ちだと思っています。
チームが商材ごとに分かれている状態から、最終的には「どの商材も扱える営業チーム」へ。
得意商材や得意顧客層の違いはあっていいが、プラザクリエイトが持つ商材を全員が紹介するのは当然——そんな組織への変革が中期の目標だ。
部署の壁の正体——プライドが生んだ溝
なぜ、これほどまでに部署の連携は難しかったのか。この問いに対し、山﨑は核心を突く分析を示した。
アイデンティティや帰属意識が、会社ではなく商材・部門に向いてしまっていた。
例えば、店舗であるパレットプラザが好き、だけど他のことはやりたくない——という声が実際にありました。
プラザクリエイトの社員というより、パレットプラザの担当者という感覚が強かった。
各部署がそれぞれ苦労して商材を作り上げてきた歴史がある。
その誇りが、知らず知らずのうちに「壁」になっていた。
スキルが商材にとどまるから視座が上がらない、視座が上がらないからスキルも商材にとどまる——その悪循環を断ち切るのが、クロスセルプロジェクトの本質的な使命だ。
部門視座から会社視座へ。
視座が上がれば行動が変わる。
個人のキャリアにとっても、プラザクリエイト全体として商品を提案した」と語れる営業経験は、どこへ行っても武器になるはずです。
それぞれが語る「変化」——顔が見えると声がかけられる
雨宮は、社内部活(ボルダリング部)での交流がクロスセルの土壌になっていると実感している。
一緒に活動していると相手のことが理解できる。
その人に興味が出て、その人がやっていることにも興味が出る。
そういう積み重ねが、クロスセルが自然に起きる環境を作っている。
神山は、チーム戦の中で生まれる「ありがとう」の連鎖を挙げる。
トスアップしてくれて成約できたら、ありがとうと言いたくなる。
言われた人も嬉しい。
プラザの売上も上がって、個人も成長して、
お客様にも喜んでもらえる——本当にWin-Winの循環だと思います。
【プロジェクトメンバーの声】


山崎 陽生(やまざき ひなた)
法人事業本部 法人営業部 営業推進G
クロスセルプロジェクトメンバー
他社の営業は顧客開拓や数字に追われ、常にピリピリした雰囲気の中で仕事をしているとよく耳にします。私自身も少しだけその環境を体験し、効率やスピードという点ではプラザは他社には勝てないと率直に感じました。
私がプラザに入社した理由は、プラザの雰囲気や居心地の良さに魅力を感じたからです。
プラザの「みんなの広場」に店を構える営業は、自分のお店だけでなく「せっかくだからあちらにも寄っていってください」と隣のお店を快く紹介できる存在であると思います。こうした行動こそが、お客様も私たちも、関わる人すべてがハッピーになれる、プラザの生存戦略だと考えています。
プラザクリエイトが数字だけを追う営業会社にならないためにも、クロスセルは必要不可欠な取り組みです。
ただ現状では、まだ特別な取り組みに留まっているのが実情です。 。
クロスセルを少しでも当たり前の文化にしていけるよう、これからも積極的に取り組んでいきたいと思っています。


和田 永二朗(わだ えいじろう)
法人事業本部 プロダクト営業部 グラシス営業G
クロスセルプロジェクトメンバー
法人営業部では、各メンバーが自分の担当以外の商材も提案・販売できるよう、クロスセルプロジェクトを展開しています。
このプロジェクトにて、クロスセル事例の共有や、成果をあげたメンバーへの表彰、景品付与など、メンバーのモチベーションアップにつながる施策を実施中です。
法人営業部の提案力向上に貢献できるよう、引き続き頑張ります。


長谷 美穂(ながたに みほ)
法人事業本部 プロダクト営業部 One-Bo営業G
クロスセルプロジェクトメンバー
本プロジェクトは、「自分の担当している商材以外も活用し、お客様のお困りごとをより幅広く解決できるようになること」をテーマにスタートしたと記憶しています。今振り返ると、多岐にわたる事業を展開しているプラザクリエイトだからこそ、始めやすかった取り組みではありますが、一方で各商材や顧客層が大きく異なるがゆえの難しさも感じています。
だからこそ、この2年ほどでプロジェクトの形を変えながら、試行錯誤と挑戦を続けてきました。その結果、最近ではクロスセルの成果が目に見えて向上しており、とても良い状況にあると感じています。
本来は、このようなプロジェクトがなくても部署間のコミュニケーションが活発に行われ、お互いに連携できることが理想だと思います。
いずれ「このプロジェクトが必要なくなる日」が来るよう、引き続き積極的に動画出演などにも取り組んでいきたいと思います。


井島 政人(いじま まさと)
法人事業本部 プロダクト営業部 なんでもダビング営業G マネージャー
クロスセルプロジェクトメンバー
社歴が長い人ほど、いろんなことをやっている当社の取り組みは自分から興味を持って聞きに行き、紹介しようという話はあったものですよね。
当社の名刺を持ち歩いているのだから、看板を背負ってるものだとよく言われていました。
だから特に営業は、当社の商材を説明できて当たり前でした。
この感覚は社長を始め役員・部長はわかっている人が多い反面、5年目くらいまでの社員は教わることもないので、自部門のことだけしか把握してない方も多いと思います。
クロスセルの取り組みは全員営業として大事な取り組みだと思って参加しています。
メンバーへのメッセージ
取材の最後、山﨑健一は社員一人ひとりへの言葉を、静かに、しかしまっすぐに語ってくれた。
担当商材ではなく、プラザクリエイト全体の中で自分が何をやっているか、会社にどう貢献できるか——そういう視点で仕事を捉え直してほしい。
スキルと目線を同時に上げていくことが、会社の成長にも、皆さん自身の成長にもつながります。
若いメンバーにはぜひ、ポジティブにチャレンジしてほしい。
2023年から数えて3年、複数チームがリレーしてきたクロスセルという挑戦は、今まさに「文化」への転換点を迎えている。法人事業部の地道な実験が、いつかプラザクリエイト全社の当たり前を変える日を、チームは確信とともに見据えている。


(おわり)
【前編の記事はこちら】


(記事執筆)


いからしひろき
プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/
(編集・デザイン)


西岡明子
株式会社プラザクリエイト/入社以来、主にパレットプラザの商品・サービス・販促・店舗内装のグラフィックデザイン各種を担当し、2018年より展開のDIYキット「つくるんです®」ブランドの拡大に従事。また、フォロワー数1.6万を超える「つくるんです」公式Xを開設から2025年10月まで担当。入社約30年の長い社歴を生かした目線でマガプラを盛り上げるべく2025年10月よりマガプラの3代目編集長となる。














