手持ちのスマホでワンラックアップの仕上がりへ!カメラ機能を駆使したら、いつもの日常がいきなり「アナザースカイ」になりました

日進月歩で進化を続ける最新のスマートフォン。特に、カメラ機能のアップデートはその中心です。
確かに惹かれる、でもそんなに頻繁に最新機種へアップデートするなんて無理…!そもそも、最新スマホじゃないとイケてる写真って撮れないのか!?あれそういえば、いつもデフォルトのカメラ起動→「パシャ」しかしてないかも…?
ということで今回は、いつものスマホでワンラックアップの写真撮影に挑戦!知っているようで知らないスマホカメラ機能やその効果をご紹介していきます。
「パリの写真=自動でオシャレに」は幻想だった
ほんとうに、パリはいつも曇っている。そのせいか私のスマホのカメラロールには、いまいちパッとしない写真ばかりが並んでいます。
でもそれは言い訳かもしれません。空が写っていない写真でも、どれもパリとは思えない凡庸な写真ばかり。一方で、女優の杏さんなどのパリ在住者が発信する写真は、いつも素敵です。つまり、私には写真のセンスが致命的に無いということなのです。
…そんな都合の悪い真実からそっと目を逸らしフランスでの生活を続けていた自分に届いた、今回の企画。たしかに、この課題をクリアしなければ、これからもパリの美しい一面を収めるなんてできないような気がする。そう思い、ネットやAIに頼ってみたところ、手持ちのスマホでも撮り方やカメラ機能を使うことで、格段に見栄えがするという情報に辿り着きました。
こうして私は、愛用のスマホを片手におしゃれな写真を撮る旅に出かけることにしたのです。レンズの向こうに、私だけのアナザースカイを見つけるために。

鈍い曇り色に負けず、ワンラックアップを目指していきます!
テクニック1.シャドウで曇り空をごまかす
まずは、パリで有名なセーヌ川にかかる「ポン・ヌフ」へ。雨上がりのセーヌ川も空も、鉛のように重い色をしています。

この重さを、どうにかごまかせないか。私はカメラの「シャドウ」をいじってみました。
シャドウとは、写真の暗い部分の明るさだけを調整できる機能です。影を明るくして、細部が見えるようにするのに役立ちます。 明るくしていくと……

ちょっとだけ、晴れているように見えます。
もちろん、写真は晴れた日に撮るに越したことはありません。でも、常にそうは運ばないのが人生というもの。この操作一つで、天候によるアンラッキーを打つ消せるのは大きな発見ではないでしょうか。目の前の曇り空をどうにかして誤魔化す――人生の知恵が一つ増えた気がしました。
テクニック2.広角レンズ、パノラマ、軸ずらしテクでおしゃれに
セーヌ川を後にし、今度はお気に入りの教会を訪れます。早速、外観写真をパシャリ。

そこで、「広角レンズ」を使ってみました。これは、標準のレンズよりも広い範囲を撮影できる機能で、建物の壮大さや奥行きを強調してくれます。

のっぺりとした建物が、ガイドブックで見かける顔に変わりました。でもなんだかまだ物足りません。

街並みの中に収まったことで、奥行きが増し、存在感の現実味が増しました。雰囲気もより伝わってくる気がします。
外観写真の上達っぷりに満足したところで、教会の内部へ進みシャッターボタンを押します。特に記憶に残らない一枚が撮れました。

この印象の薄さを解消すべく、今度はカメラ好きからよくオススメされる、「グリッド線」を試すことに。グリッド線とは、画面を縦横に分割する線を表示し、構図のバランス、特に水平・垂直を取りやすくする機能です。
「真正面から撮る日の丸写真は、どこか素人っぽいとされている」と、私にグリッド線の存在を教えてくれた知人は言っていました。それはまるで、人生の中心に常に自分を置いてしまうような、無防備な行為なのかもしれません。
そんなことをぼんやり考えつつ、グリッド線機能を使って、少し斜めに、中心からずらして撮ってみました。

確かに、真正面よりも、わずかにおしゃれな抵抗をしているように見えます。
テクニック3.ホワイトバランスと明度で温度を操る
教会の中をあてどなく歩いていると、いつもは見過ごしていた小さな展示物に出会いました。次の被写体をこのスポットに定めます。

誰もが見過ごしているせいか、人もあまりいません。ここぞとばかり、3つの変化を比べてみることに。
まずは「ホワイトバランス」。ホワイトバランスとは、写真の「白」を正確に白く見せるための色の調整機能です。光源によって写真の色味は変わりますが、この機能をいじることで、意図的に写真全体の「色温度」(暖色系か寒色系か)を変えられます。

色温度を上げると、写真は黄色っぽくなり、まるで中世の修道院に迷い込んだような、温かい、古い物語の匂いがします。
比較のため、わかりやすい変化をつけてお届けしました。微調整の感覚をものにすれば、ワンランクアップにグッと近づけそうな機能ですね!
「日常の切り取り方」の変化を感じながら旅は続く
写真を撮り終えてみて、撮影スポットの辺りを見渡しますが、やはり周囲に人はいません。一番の見どころであるパイプオルガンや、ステンドグラスの周りに集まっています。私もこの教会に何度も来ていたのに、こんなディテールに目を向けたのは初めてでした。今回も撮影の目的がなかったとしたら、クライアントへの連絡をするために、スマホを眺めていて気がつかなかったでしょう。
教会を出て、いつもハトに餌をあげているおばあさんに話しかけてみました。いつもは急いでいて、そんなことをしたことはありません。
「ハトにご飯をあげるのが、私の日課なの。お腹いっぱい食べているハトを見ると、私も幸せになるのよ」
おばあさんはそう言って笑いました。
私たちはいつも、目的の場所にたどり着くために急いでいます。通り過ぎる景色は、ただの背景にすぎません。写真を撮るという目的のない散歩は、何気ない日常を教えてくれるのかもしれません。
そして私はふと、ある女性を思い出しました。特に目を引く外見というわけもないのに、旦那さんが撮る彼女の写真は強く印象に残っています。そこに、あふれんばかりの愛が反映されていたからです。あの時、私が羨ましかったのは、被写体の美しさではなく、撮影者の気持ちだったのかもしれません。
パリはあるがままを撮影すると、すぐに灰色の街になってしまいます。でも、カメラの機能という小さな手品を使い、そして何より愛をもってレンズを向けたとき、その灰色は少しだけ溶けて、優しい色を帯び始める。
私のアナザースカイは、レンズの向こうではなく、いつも通り過ぎていた日常の中に、静かに立っていたのかもしれません。そう思ったら、明日からのパリの雨の日も、少しだけ楽しみになってきました。
(後編に続く)
(この記事の取材・執筆者)
綾部まと
三菱UFJ銀行の法人営業、経済メディア「NewsPicks」を運営するユーザベースのセールス&マーケティングを経て、独立。フリーランスのライター・作家として、インタビュー記事、エッセイやコラムを執筆。フランス・パリ近郊の町に在住。3児の母。趣味はサウナと旅行。
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(企画・編集・デザイン)

大宮光
株式会社プラザクリエイト・マガプラ2代目編集長














