代表対談企画:バスリエ松永社長×プラザクリエイト新谷社長「“心身の休養” を経営課題に-お風呂から考える組織づくりの新トレンド」【前編】

温浴文化を活用した新しいビジネスモデルを展開する「バスリエ株式会社」。2005年の創業以来、お風呂グッズの専門店から、サウナ施設の運営、企業向けウェルネスプログラムの提供まで、事業領域を着実に拡大してきた。ブームにもなっているサウナや温泉は、果たして企業経営に活かせるのか。同社代表の松永武氏と、プラザクリエイトの新谷隼人社長が、日本独自の入浴文化の可能性について語り合った。
各社代表をゲストにお迎えし、プラザクリエイト代表・新谷と幅広いテーマについて語り合っていただく新企画、「代表対談シリーズ」の第3弾です。
参加者PROFILE

松永 武(まつなが たけし)
バスリエ株式会社 代表取締役CEO
10代に地元富山で自動車販売や音響機器関連の仕事を経験。上京後はライブハウスでアルバイトを経て家電量販店に勤務。寝具メーカーを経て、2005年にお風呂グッズの専門店としてバスリエを創業。2008年に法人化し代表取締役に就任。2021年にはサウナ施設「Thermal Climb Studio FUJI」をオープン。「お風呂のソムリエ」として、TVや雑誌などメディアでも活躍中。

新谷 隼人(しんたにはやと)
株式会社プラザクリエイト 代表取締役社長
広告代理店勤務を経て、株式会社リクルートに転職し、3年連続でMVPを獲得。リテール新規開発グループやカスタマーサクセス領域にてマネージャーとして活躍。2019年に株式会社プラザクリエイトへ入社。取締役を経て、2022年より代表取締役社長に就任。
睡眠から始まった温浴への探求


松永さん、本日はありがとうございます!
普段からお話はしていましたが、バスリエさんの“本拠地”に来るのは初めてなので、めちゃくちゃワクワクしてます。お風呂グッズがズラリと並んでいて、早速テンション上がりますね!



そうでしたね、ようこそいらっしゃいました。どうぞ色々見て回って行ってくださいね



ありがとうございます!後ほど、ぜひ



まずは対談のスタートとして、松永さんがバスリエを立ち上げた経緯を教えていただけますか?



実は私、元々は寝具メーカーに勤めていたんです。当時は、NASAが開発した低反発枕が日本に入ってきて、睡眠の重要性が注目され始めた時期でした。江古田から我孫子まで2時間半かけて通勤していて、睡眠時間が4時間程度しか取れない日々が続いていました



うわぁ、それは相当ハードですね。毎日往復5時間の通勤って、想像するだけでクタクタになりますね



ええ。そんな時、当時の彼女(今の妻)から「お客さんに眠りを売っているのに、自分が眠れていないのはおかしい」と言われて、ハッとしました



それは、確かに



それで、彼女が買ってきてくれた入浴剤を使ってみたら、同じ4時間の睡眠でもすっきり目覚められたんです。これはすごいと(笑)。それをきっかけに、お風呂と睡眠の関係について興味を持ち始めました



その経験から一気にバスリエ創業までひたはしるわけですから、衝撃の大きさが推し量れますね




日本固有の温浴文化



いまや自ら“BATHLIER(バスリエ)”(※)と名乗り、入浴に関する啓発活動もされています。そこでお聞きたいのですが、日本の温浴文化って、世界的に見てもユニークなんですか?



はい、独特ですね。例えば古代ローマにも温浴文化はありましたが、水質の問題で途絶えてしまいました。一方、日本には世界一の温泉資源があるので、常に新鮮なお湯に入ることができた。そのため、湯治という形で医療としての温浴文化が根付いたんです



そうした歴史的背景や、地理的な要因に関係しているのですね



ええ。そして日本の温泉文化は政治とも深く結びついていました。例えば古事記には、聖徳太子が道後温泉に行ったという記述があります





現代の貨幣価値に換算すると2億円ほどかかる旅だったそうですが、これは単なる物見遊山ではなく、政治的な意味合いが強かったと考えられます。また、僧侶たちが、仏教普及の一環として温浴施設を作っていった歴史もあります



古来より、温浴文化は日本人にとって切っても切り離せない存在だった。そこからさらに複合的な要素が絡み合って、現代の日本の温浴文化が形成されてきたということですね。いやぁ、お風呂一つとってもなんとも奥が深い!
※BATHLIER(バスリエ)
BATH(お風呂)とワイン等で知られるSOMMELIER(ソムリエ)を組み合わせた造語
健康経営の新しい視点



松永さんは常々、人間の基本的な欲求として「食欲」「運動欲」「睡眠欲」があって、その次に「浴欲」があるとおっしゃっていますよね。これについて詳しくお聞かせいただけますか?



現代社会では、脳を使う機会が多く、視覚情報による脳への負荷も大きい。その回復に温浴が効果的なのです。ポイントになるのが「血流」です





血流、ですか



血流が良くなると体調が良くなるのはご存知ですよね



ええ



血流を自分でコントロールできる唯一の方法が、温度変化なんです。温めると血管が拡張し、冷やすと収縮する。この血管の拡張と収縮を意識的にコントロールすることで、血流が良くなり、脳の疲労回復や免疫力の向上につながるんです



となると、血流を整えるのにより良い入浴方法というのもあるんですか?



あります。例えば、食事ではスープやサラダから食べるように、お風呂も段階を踏んでいくことが大切です



お風呂の入り方って、どこかで習うようなものではないですから、一度自分のスタイルが確立されちゃうとそこに疑問を持つことってあまりないですよね



そうなんです。そこで、私たちバスリエでは「サーマルクライム」という「熱の登山」のコンセプトを提唱しています。これは体を徐々に温めていく方法です。多くの人がサウナに1回入っただけで体が十分温まったと思いがちですが、実際には芯まで温まっていません。適切な段階を踏まないと、せっかくの効果を最大限に得られないんですよ



サウナは私も大好きで、頻繁に行きます。あの“ととのう”感じがたまらなくて(笑)。でもサーマルで体験するまでは『芯まで温める』なんて意識したことはなかったですね。段階を踏むのって、そんなに大事なんですね!


実は日本に向いているドイツ式サウナ



ところで、松永さんの“推しサウナ”ってありますか?



そうですね。ドイツ式サウナがおすすめですね



ドイツ式サウナは規模が大きく、日本のスーパー銭湯の5倍ほどの広さで、10種類、20種類のサウナが当たり前のように設置されています。また、フィンランドサウナやロシアのバーニャ、トルコのハマムなど、さまざまな国の温浴文化を融合させています



ドイツ式ですか、あまり聞き馴染みがありませんでした。どのあたりが推しポイントなんですか?



ドイツは日本と気候も国民性も似ているんです。フィンランドやロシアのサウナも素晴らしいのですが、これらの国々は気候が日本とは大きく異なります





私は2012年頃からドイツに行ってサウナを研究し始め、日本人の体質や生活習慣に合うアプローチだと確信しました。それが「サーマルクライムスタジオ富士」を富士山の麓に作った理由の一つでもあります



15年近く前から、ドイツ式サウナに着目されていたんですね



ええ。私が目指しているのは、健康面の効果だけでなく、サウナや入浴を通じた人々の交流や楽しみの場を創ることです





ドイツのサウナが教えてくれたように、体の感覚を共有することで、年齢や性別を超えたコミュニケーションが生まれます。つまり、人々が本当の意味でリラックスし、つながれる場所を作りたい。それが私の思いであり、追求するミッションです



その思い、「サーマルクライムスタジオ富士」を利用するとよく分かります





後編では、いよいよ“お風呂×経営”がどう結びつくのか、その秘訣に迫りたいと思います!お風呂好きの方も経営に携わっている方も、必見です‼ぜひお楽しみに!
【サーマルクライムスタジオ富士の詳細はこちら】


(このコラムの執筆者)


いからしひろき
プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。
きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/
(撮影者)


髙野宏治