代表対談企画:EVeM長村社長×プラザクリエイト新谷社長「『型』と『感情』のマネジメントを探る」【前編】

経営カンファレンスでの出会いから始まった、二人の経営者の対話。マネジメント研修で高い評価を受けるEVeM代表の長村禎庸氏と、プラザクリエイト社長の新谷隼人が、「型」と「感情」の両面からマネジメントを見つめ直し、次世代型組織の在り方を模索する──。
各社代表をゲストにお迎えし、プラザクリエイト代表・新谷と幅広いテーマについて語り合っていただく新企画、「代表対談シリーズ」の第2弾です。
参加者PROFILE

長村 禎庸(ながむら よしのぶ)
株式会社EVeM 代表取締役CEO
2006年大阪大学卒業後、リクルート、DeNA(広告事業部長、AMoAd取締役等)を経て、ハウテレビジョンではCOOとして東証マザーズ上場を実現。2020年にEVeMを設立し、ベンチャー企業を中心にマネジメント支援を展開。著書に「急成長を導くマネージャーの型」(2021年、技術評論社)がある。

新谷 隼人(しんたにはやと)
株式会社プラザクリエイト 代表取締役社長
広告代理店勤務を経て、株式会社リクルートに転職し、3年連続でMVPを獲得。リテール新規開発グループやカスタマーサクセス領域にてマネージャーとして活躍。2019年に株式会社プラザクリエイトへ入社。取締役を経て、2022年より代表取締役社長に就任。
従来のマネジメント研修の曖昧さ


初めてお会いしたのはICC(※)でしたね!



EVeMさんのセミナーを会場で受けて、執行・活用・伸張・連携の4つの役割がマネージャーにはあるということを理解しました。まさに目から鱗で、これは社内でも取り入れたいと思って相談させていただいたのがきっかけだったかと思います



そうでしたね。私たちの研修は元々ベンチャー企業向けが中心だったので、上場企業のプラザクリエイトさんからお声がけいただいた時は少し驚きました





実は私、リクルート時代から、組織マネジメントについてずっと課題意識を持っていたんです。個人としての成果は出せていましたが、より大きな組織を動かしていく上で、何か足りないものがあるのではないかと



それはどういった点でしょうか?



多くのマネジメント研修って、「このような心構えで」「このような姿勢で」といった、精神論に終始してしまう。でも長村さんは「マネジメントとは、こういう業務なんです」と、極めて実践的なアプローチを示してくださった。プラザクリエイトにとって、まさに求めていたものでした



ありがとうございます。私自身、以前ベンチャー企業で経営に携わっていた時、マネジメント人材の育成に悩んでいました。外部の研修会社に相談しても、なかなか満足できる答えが得られなかったんです



やはり、心構えを説くような内容が中心だったのでしょうか?



そうですね。例えば「社員のモチベーションを上げるにはどうしたらいいでしょうか」と質問しても、「コミュニケーションを大切に」といった、あまりに抽象的な回答しか返ってこない。それでは現場では使えないと感じたんです
※ICC
Industry Co-Creationサミットのことで、「ともに学び、ともに産業を創る。」をコンセプトとした大規模カンファレンス。毎年、400名以上の登壇者を含む1000名以上の参加者が集まり、朝から晩まで真剣な議論と学び合いを行う。
マネジメントの「型」を作る



組織の経営者は、大なり小なり似たような経験があるのかもしれませんね



長村さんはその実体験を元に、「型」によるマネジメントを提唱されるようになったんですか?



はい。マネジメントにおいて最も重要なのは、感情をコントロールすることなんです





例えば、メンバーが指示通りに動かなかった時、「自分は軽視されているのではないか」と考えて感情的になってしまう。でも、それは建設的ではありませんよね



その話、すごく分かります。お恥ずかしい話、私も若い頃は感情的になってしまうこともありました。後から冷静に振り返ってみると、自分の指示の出し方に問題があったケースがほとんどだったなと





だからこそ私たちは、執行・活用・伸張・連携の4つの基準を用いて「マネジメントができている状態」を定義し、再現可能なマネジメントの技術とその実践方法を60個の型に整理し、トレーニングを掛け合わせたマネジメントプログラム「マネ型」として提供しています





この「型」を用いることで、誰でも冷静に対話することができるので、感情的にならずに済むんです



つまり「パターン」を習得するということですよね。言われてみると納得感しかありませんが、実は大手企業でも、そういったマネジメントの体系化って、それほどできていないのではと感じます



むしろ規模の大きな企業ほど、個々のマネージャーの経験と人間性に依存している印象がありますよね



本当にそうなんです。営業やエンジニアリング、経理など、どの職種にもマニュアルやフローがある。でも、不思議なことにマネジメントだけは「経験と人間性」に委ねられている。影響力の大きさに反して、今まであまり触れられてこなかった領域という印象です



特に最近は中途採用も増えて、価値観も多様化してきました。一昔前のように「先輩の背中を見て学べ」という時代ではなくなっている。だからこそ、体系的なマネジメントの重要性が増しているんですよね
型と個性のバランスが大事



おっしゃる通りだと思います。一方で、「型」を学ぶことと、その人らしいマネジメントを実現することの両立って、相反してしまうこともあるのではないでしょうか?



いい視点ですね



「型」は、あくまでも感情をコントロールするための道具です。最終的には、その人らしいマネジメントスタイルを確立することが重要。でも、そこに至るまでの過程として、型を学ぶ必要があるんです



まさに、そうですね



私の場合、前社のリクルートでの経験が強みでもあり、弱みでもありました。スピード重視の文化で培ったマネジメントスタイルが、必ずしもプラザクリエイトには合わない。でも、長村さんの「型」を学ぶことで、より客観的に自分のスタイルを見直すことができたのかなって





面白いですね。型を学ぶことで、逆に自分らしさが見えてくるということですか?



そうなんです。例えば、以前は「この程度のことはできて当たり前」と思っていたことが、実は自分の中にある暗黙知だったと気づく。型があることで、それを言語化して伝えられるようになったわけです



まさにそれが私たちの目指していることです。経験や勘に頼るのではなく、誰もが再現できる形でマネジメントを実践する。そうすることで、組織全体の力を高められると考えています



特に若い世代のマネージャーにとっては、型があることで随分と心理的なハードルが下がるんじゃないかなと思っています



そうですよね。今の時代、「言うことを聞いてください」というマネジメントは通用しません。人材の流動性が高まる中、優秀な人材は簡単に会社を去ってしまう。だからこそ、技術としてのマネジメントが重要になってくると思います


(このコラムの執筆者)


いからしひろき
プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。
きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/
(撮影者)


髙野宏治