代表対談企画:ログラス布川社長×プラザクリエイト新谷社長「次世代経営者が語る、組織づくりの哲学」【前編】

アイキャッチ画像(マガプラ記事no.35用)

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偶然での出会いから始まった、2人の30代経営者の関係。投資銀行出身で25歳にして起業を決意した布川友也氏と、リクルートでMVP3連覇を果たし36歳でプラザクリエイト社長に就任した新谷隼人。異なる経歴を持つ2人が、起業の原体験から、意外な失敗談、そして日本経済の未来まで、これまで明かされなかった本音を語り合う──。

各社代表をゲストにお迎えし、プラザクリエイト代表・新谷と幅広いテーマについて語り合っていただく新企画、「代表対談シリーズ」のスタートです。

参加者PROFILE

布川 友也(ふかわ ともや)

株式会社ログラス 代表取締役CEO
慶應義塾大学 経済学部卒。新卒で投資銀行に勤務。M&A、IPOアドバイザリー業務に従事。その後、上場直後のITベンチャー企業に経営戦略担当として参画し、IR・投資・経営管理等を中心に業務を行い、東証一部への市場変更を経験。2019年、株式会社ログラスを創業、代表取締役に就任。

新谷 隼人(しんたにはやと)

株式会社プラザクリエイト 代表取締役社長
広告代理店勤務を経て、株式会社リクルートに転職し、3年連続でMVPを獲得。リテール新規開発グループやカスタマーサクセス領域にてマネージャーとして活躍。2019年に株式会社プラザクリエイトへ入社。取締役を経て、2022年より代表取締役社長に就任。

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サウナという場で生まれた縁

株式会社ログラスの布川代表(写真左)と株式会社プラザクリエイト代表の新谷(写真右)
新谷

実は最初のご縁は、ビジネスカンファレンスの「サウナセッション」だったんですよ! まさかサウナでこんな出会いが生まれるとは、当時は想像もしていませんでした

布川

そうそう。奈良の山奥の、サウナ誌にも載っている有名なサウナでしたね。その時、経営者は新谷さんと私含めて3人だけで、他はカンファレンスのスタッフの方々という状況でしたが、そこで意気投合したのが始まりです

新谷

その後も何度かお会いするうちに、私自身がログラスのプロダクトにどんどん惹かれていきました。経営を回すうえで、スピーディにデータを把握して原因を探り、即座に施策を打ち出したいという悩みが常にあったんです。そこを一気に解決してくれる可能性を感じましたね

布川

そうだったんですね

新谷

実は、タイミング的にすぐ導入できる状況ではなかったんですよね。でも、それでもなお、ログラスの凄さと布川さんの経営に対する真摯な姿勢に強く魅了されました

「良い景気を作ろう。」という志

布川

読者の中にはご存じない方もいると思うので、少し自己紹介させてください

布川

ログラスは、大企業から中堅企業向けの予算策定・経営管理のクラウドサービスを提供しています。具体的には、今はExcelでやっている予算策定や、基幹システムと連携しての予実管理をクラウド上で実現するソリューションです

株式会社ログラスの掲げるミッション
https://www.loglass.co.jp/about より)
クラウド経営管理システム「Loglass」について
https://www.loglass.jp/ より)
布川

例えば、経営者にとってみれば、部門が100個あれば100部門からデータを集める必要がありますし、売上げだけでなく、その下のKPIや商品別の予算など、細かなデータも知りたい。でも、それをいちいち経営企画部の人に頼んで集めてもらうのは面倒だし、データもバラバラだったりして大変だと思うんです

新谷

まさに、悩みどころです

布川

しかし、それをログラスでは自動化し、様々な切り口で分析できる環境を提供しています

新谷

そこが画期的ですよね

新谷

そもそも布川さんは、どういう経緯で起業を? ログラスを創業したのは25歳と若かったですよね

布川

2つのきっかけがあります

布川

1つは幼少期のシンガポールでの経験です。1999年頃、父の駐在で2年ほど暮らしました。当時のシンガポールは、地下鉄も1本も通っていない、今のような都市化される前のいわば途上国でした。それが20年余りで、カジノやユニバーサルスタジオができ、地下鉄も張り巡らされ、物価も日本より高い国に発展した。その劇的な変化を目の当たりにして、逆に日本の停滞感を強く感じました

20年で急速の発展を遂げたシンガポール
布川

もう1つは投資銀行での経験です。SMBC日興証券で、PEファンドや商社の担当として、M&Aのアドバイザリー業務に携わりました。その中で、日本企業の虎の子の事業が外資のファンドに売却される場面に立ち会うことがありました。もちろん、それによって事業が良くなり、株価が上がることもあります。でも、もっと経営を高度化できる自律的な会社が日本に増えれば……という思いが芽生えたのです

新谷

布川さんの視座の高さには本当に驚かされますね。「日本そのものをどう変えていくのか」「グローバル社会でどんな存在感を発揮すべきか」という視点は、なかなか誰もが持てうるものではありません。
さらっと話されますけど、そのスケールの大きさには圧倒されますし、刺激をいつも頂いてます

布川

2年前にシリコンバレーに行った時の経験も大きかったですね。やはりビジネスでも米国はメジャーリーグなんです。日本を代表するスタートアップであるメルカリでさえ、アメリカから見ると巨大テックとはいえない規模です

布川

しかし一方で、日本は世界で4位の経済大国で、GDP対比の現預金・資産は世界一。iPhoneのディスプレイだって日本の技術なしでは作れない。そういったポテンシャルをどう活かすか、それが「良い景気を作ろう。」というミッションに繋がっていきました

断られることを恐れない営業哲学

新谷

学生時代、ヒッチハイクをしていたって本当ですか? ぜひ、そのときのエピソードを聞かせてください!

布川

はは(笑)。公の場では初めて話すエピソードなんですが、これは実は今の経営にも通じる部分があって。何かを実現するために営業をする、打席に立つという行為は基本的に確率論なんですよ。何台に声をかけて、どれくらいの確率で乗せてもらえるか。信号が変わるまでの20秒で自分をアピールして、相手に「乗せよう」と思ってもらう。まさに営業と同じです

新谷

それって、プレゼンや営業にもそのまま応用できる極意ですよね!

布川

ええ。大切なのは、断られることを恐れないこと。ヒッチハイクでは怒鳴られたり、邪魔だと言われたりすることもある。でも、100人に1人でも助けてくれる人がいる。そして実際に乗せてもらえると、お互いに楽しい体験になる。要は潜在顧客をいかに掴むか。今の経営でも、その経験は活きています

新谷

そういった経験があるからかもしれませんが、以前ご一緒した商談のとき、布川さんって最初の関係性作りや課題設定の部分にすごく時間をかけていましたよね

新谷

たとえば営業担当の方が話している途中でも、「いま気になったことは何でも言ってください」とこまめに区切って、相手の声にしっかり耳を傾けていました。あれにはどんな狙いがあるんですか?

布川

弊社で扱っているのは経営の中核に関わる製品だけに、経営者によって用途は大きく異なります。だから、どんなふうに使いたいのか、どんな課題があるのか、しっかり理解した上でないとすすめられないからです

新谷

なるほど、そういう意図があったんですね

新谷

いやあ、布川さんって本当に「お願い上手」ですよね。私自身も含めて、若手の経営者の中には「それ、恥ずかしくて言えない…」という人も多いと思うんですが、布川さんにはそれがない。見習いたいです

布川

創業当初は本当に何もない状態からのスタートでしたから。25歳で起業して、人脈も実績もない。そこで最初に取り組んだのが、CFO向けの無償の勉強コミュニティでした。最初はGIVEからスタートですね。そこに1,000人ほどのCFO・経営企画経験者が集まってくださって、「製品を考えているので、買う買わないは自由ですが、話を聞いていただけませんか」とお願いしていったのです

布川

その時は本当に泥臭かったです。知り合いの会社のオープンスペースを借りて勉強会を開催したり。でも、そういう活動を続けているうちに「頑張ってるね」と応援してくださる方が増えていって……。大切なのは恥をかくことを恐れない。お願いをしないでチャンスを逃すくらいなら、まずは言ってみる。それが起業家としての私のスタンスです

新谷

そういう地道な行動の積み重ねが、今のログラスさんを支えているんだなと実感しました。営業畑出身じゃないのに、ここまでしっかり人脈を築き上げる力があるのは本当にすごい。スタートアップ界隈でも、こんなタイプの経営者はなかなか珍しいと思いますよ

布川

もちろん、うまくいかないこともありますよ。多くの方に頭を下げてお願いする中で、関係性が薄い人にお願いするケースもありますが、そういう時に「私はあなたの営業マンじゃない」と怒られることもありました。本当に仰る通りであり、その方には懇切丁寧にお礼と謝罪を伝えました

新谷

それでも決して諦めない、その強さは本当に尊敬します!

布川

例えば孫正義さんでも、最初は「この電子翻訳機を買ってください」とお願いして回ったわけです。そこで嫌われることを恐れていたら、何も始まりませんよ

新谷

いやあ、たくましすぎますね(笑)。そのメンタルの強さ、ぜひ分けてほしいです!

【後編に続く】

(このコラムの執筆者)

いからしひろき

プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。

きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/

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