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代表対談企画:ネットプロテクションズ秋山取締役×プラザクリエイト新谷社長─業界1位を獲得した「独自のティール組織」の本質に迫る【後編】

目次

前編では組織哲学の違いや評価制度について語り合った両者。
後編では、異なるアプローチを取りながらも、「人の成長」という共通の想いで繋がる二人の対話から、これからの組織づくりのヒントを探ります。

参加者PROFILE

秋山 瞬(あきやま しゅん)

株式会社ネットプロテクションズ 取締役

慶應義塾大学卒業後、人材系スタートアップに新卒1期生として入社。新規事業責任者、関西支社長を歴任した後、2009年にネットプロテクションズに人事責任者として参画。2013年より主力事業「NP後払い」のセールスマネージャーを兼務し、2017年に執行役員、2023年に取締役に就任。2018年にはマネージャー職を廃止した人事評価制度「Natura」の導入を主導し、ティール型組織の実践を通じて事業・組織双方での変革をリードしている。

新谷 隼人(しんたに はやと)

株式会社プラザクリエイト 代表取締役社長
広告代理店勤務を経て、株式会社リクルートに転職し、3年連続でMVPを獲得。リテール新規開発グループやカスタマーサクセス領域にてマネージャーとして活躍。2019年に株式会社プラザクリエイトへ入社。取締役を経て、2022年より代表取締役社長に就任。

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「象徴的存在」と「実行型リーダー」

新谷

後編では、もう少し踏み込んだお話をさせていただければと思います。私は36歳で社長に就任したのですが、若いリーダーとして組織をどう牽引すべきか、いつも悩んでいます。そこでぜひ、ティール組織における社長の役割についてお聞かせいただければと

秋山

うちの場合、社長の柴田は「象徴的存在」に近いかもしれません。存在することで求心力を生み、方向性を示すけれど、細かい指示は出さない。でも新谷さんのアプローチはどちらかというと「実行型リーダー」ですよね?

ネットプロテクションズでは、新入社員と社長(右上)による座談会を月に1回開催しているという
(画像提供:ネットプロテクションズ)
新谷

そうですね。新規事業の立ち上げも自分が最前線に立って行いますし、現場の声を直接聞いて判断します。多事業展開の会社では、社長が各事業の詳細を把握して、全体最適を図る必要があると考えていますから

秋山

それは事業の複雑さによるところが大きいでしょうね。シナジーを生み出すには社長の視点が不可欠と思います

新谷

秋山さんの話をお聞きして感じたのは、「メンバーが自分の頭で考える」ことの重要性は組織型に関わらず共通しているということです。アプローチは違っても、自律的な組織を目指している点では同じかもしれません

意思決定のスピードには業界特性が影響する?

新谷

意思決定についても詳しく聞かせてください。全員参加の議論が基本と伺いましたが、そうなると相当時間がかかるのではないでしょうか?

秋山

確かに時間はかかります。でも決まったことへの納得度と実行力は非常に高い。例えば中期計画も、各事業部で全メンバーが参画して策定します。時間をかけて議論した分、「なぜそれをやるのか」を全員が理解していて、自発的に動いてくれるんです

新谷

まさに理想とする動きですね。うちの場合だと、特に新規事業では「まずやってみる」ことを大切にしているんです。「つくるんです」も、小さく始めて成果を見ながら拡大していきました。市場の変化が激しい業界では、完璧な計画よりもスピードが重要だと考えています

秋山

スピード感は大事ですね。ただ、業界特性もあると思います。うちは決済インフラという性質上、安定性や信頼性が重要で、慎重な議論が求められる面もあります。プラザクリエイトさんでは、失敗した時のリカバリーはどうされているのでしょうか?

新谷

失敗は織り込み済みです。小さく始めているので、だめだったら素早く撤退する。重要なのは失敗から学んで次に活かすことです。各部門には「失敗を恐れるな」と伝えています

求める人材像の「幅」の違い

新谷

採用についてもお聞きしたいのですが、ティール組織に適した人材はどういう人でしょうか?

秋山

「本質を考えられる人」「自走できる人」「誠実で自省できる人」「自ら責任を負いたがる人」「周囲と協働できる人」。この5つを重視しています。命令や強制では動かないタイプの人たちです

新谷

絶対的なゾーンがあるんですね。うちはもう少し幅広く採用していて、営業力が高い人、クリエイティブな発想ができる人、オペレーションが得意な人など、各事業に必要な人材を採用して、入社後に適性を見極めて最適な部署に配属することが多いです

秋山

多様性という意味では、新谷さんのアプローチの方が幅広い人材を活用できそうですね。育成についてはいかがですか?

新谷

各部門でのOJTが中心ですが、最近は部門横断のプロジェクトを通して、他部署の仕事も理解してもらうようにしています。将来的には、事業特化だけではなく、全社的な視点を持った人材も増やしていきたいと考えています

組織づくりに悩む方へのメッセージ

新谷

最後に、組織づくりに悩むリーダーや、経営者を目指す方々にメッセージをお願いします!

秋山

大切なのは「思想・哲学」を持つことです。制度やツールだけを変えても、根本的な考え方が曖昧だとうまくいきません。また、「Will」を大切にしてください。想いのない施策は形骸化します。良いものは拡がり、そうでないものは淘汰される。歪みのない自然な循環が起こる環境づくりが重要です

新谷

私からは「一貫性」と「実験」の大切さを伝えたいです。組織づくりに正解はありませんが、自分たちの価値観に基づいた一貫した方針を持ち続けることが重要。そして失敗を恐れないでください。小さく始めて、うまくいったら拡大し、だめだったら修正する。その繰り返しで、自分たちらしい組織が作られていくと思います

秋山

今日は本当に刺激的な対談でした。異なるアプローチでも、同じ志を持つ経営者として、多くの学びがありました

新谷

こちらこそ、ティール組織の実践について詳しく聞けて、とても勉強になりました。お互いの組織がさらに発展していくことを楽しみにしています。本日はありがとうございました!


対談を振り返って

本対談を通じて強く感じたのは、組織に唯一の正解はないということです。

マネージャーをなくし全員で責任を担うやり方もあれば、専門性を深めて事業を最適化するやり方もある。

形は違っても、その根っこにあるのは「人の可能性を信じ、成長を後押しする」という想いです。

私自身も36歳で社長に就任してから、日々試行錯誤を重ねています。
象徴として方向を示すべきか、現場に立ち執行をすべきか。
議論を尽くすべきか、スピードを優先すべきか。

状況によって答えは変わりますが、どんな場面でも変わらないのは「人を信じる」ことだと感じています。

役職や制度、ルールを超えて、一人ひとりが力を発揮できる環境をどうつくるか。

それこそがいいチームをつくる上での最大のテーマなのだと思います。

この記事を読んでくださった皆さんが、ご自身の組織のあり方を考えるきっかけとなり、より良い組織が一つでも増えていくことを心から願います。

株式会社プラザクリエイト
代表取締役 新谷隼人

(おわり)

(この記事の取材・執筆者)

いからしひろき

プロライター、日刊ゲンダイなどでこれまで1,000人以上をインタビュー。各種記事ライティング、ビジネス本の編集協力、ライター目線でのPRコンサルティング、プレスリリース添削&作成も行う。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。

きいてかく合同会社: https://www.kiitekaku.com/

(撮影者)

髙野宏治

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